子宮頚がんと子宮体がんについて
正しく理解して定期的に検診を受けましょう。
ひとくちに子宮がんと言っても、頚がんと体がんの2種類があり、それぞれできる場所も、組織型も、なりやすい人も、できやすい年齢も違う、全く別の癌です。
子宮頚がんについて
子宮の頚部(子宮の入り口付近)にできるがんで、組織型は主に扁平上皮がんで、稀に腺がんも認めます。現在、子宮頚がんはセックスで感染する”ヒトパピローマウィルス(HPV)”が関係していることが分かってきています。がんも突然発生するものではなく、HPVに感染後、軽度異形成→中等度異形成→高度異形成を経てごく初期の“上皮内がん”となり、そして“微小浸潤がん“、“浸潤がん“へと進行していきます。軽度異形成の95%は自然に治ると言われていますが、定期的な経過観察が重要です。また最近のセックス初体験の低年齢化、セックスの自由化、多様化に伴い、子宮頚がんの発症年齢の若年化が危惧されています。
【定期検診の重要性】
早期発見には定期的な検診が唯一の手段です。初期の段階では、自覚症状はほとんどありません。まれにセックス時の接触による性器出血がある程度です。最近では10代でも検診で異常が見つかることがあり、『若いから子宮がん検診は必要ない』と考えるのは間違いです。また子宮頚がん予防のワクチンを接種されている方も、定期的ながん検診は必要です。
【がん検診の方法】
がん検診を行うためには、まず内診台に上がる必要があります。直視下に子宮の入り口をこすって細胞を取り、この細胞を顕微鏡で観察し、異常がないかどうかを判断します(細胞診)。もし細胞診で異常が見つかった場合はコルポスコピー診を行い、組織を採取し、軽度異形成、中等度異形成、高度異形成、上皮内がん、微小浸潤がん、浸潤がんのどれにあたるかを診断します。
子宮頚がん予防のためにHPVワクチンを!(予約制)
ウィルス感染で起こる子宮頚がん
HPV(ヒトパピローマウィルス)への感染が原因と分かってきています。このウィルスは一度でも性的接触の経験があれば感染する可能性がある、つまり女性の多くが一生に一度は感染する、と言われるウィルスです。感染してもほとんどの人は自然にウィルスが消えてしまうので、過度に性行為を不安がる必要はありませんが、ごく一部の人でがんになってしまうことがあります。
日本ではどのくらいの女性が子宮頚がんになるの?
毎年約1.1万人の女性が子宮頚がんになり、約3000人の女性が亡くなっています。年齢は20歳代から増え始め、30歳代までに治療で子宮を失ってしまう方も、毎年約1200人います。
子宮頚がんにならないようにする予防
1.『子宮頸がん予防のためにHPVワクチンを』(当院でも接種可能です)
- 公費負担接種対象者:小学校6年~高校1年生相当の女子
公費負担で接種できるHPVワクチンはシルガード9(9価型)、ガーダシル(4価型)、サーバリックス(2価型)の3種類です。
シルガード9は初回接種が15歳未満であれば、2回接種でOK。初回接種が15歳以上の場合は、3回接種が必要です。 - 公費負担キャッチアップ接種対象者:平成9年4月2日〜平成17年4月1日生まれの女性
(ただし公費でキャッチアップ接種を受けられる期間は、令和4年4月〜令和7年3月の3年間です)
公費負担で接種できるHPVワクチンはシルガード9(9価型)、ガーダシル(4価型)、サーバリックス(2価型)の3種類です。
公費の補助がない場合(上記の時期以外)もシルガード9の接種可能ですが、自費となり、費用は下記の通りです。
回数 | 価格 |
---|---|
1回目 | 27,500円 |
2回目 | 27,500円 |
3回目 | 27,500円 |
※3回セットを希望される方は、77,500円(通常82,500円)
2.子宮がん検診
20歳になったら最低2年に一度は子宮がん検診を受けましょう!ワクチン接種をしていても必ず!
HPVワクチンの効果
サーバリックス、ガーダシルはどちらも子宮頸がん高リスクのHPV16型、18型への感染を防ぐことができます。それにより子宮頸がんの原因を50~70%防ぎます。ガーダシルはさらに性感染症のひとつである尖圭コンジローマを引き起こすHPV6型、11型への感染も防ぎます。
シルガード9は、高リスクの16型、18型、45型、中リスクの31型、33型、52型、58型、そして尖圭コンジローマ予防の6型、11型、計9つのHPV感染を予防する効果があり、約90%子宮頚がんの発症を予防できると言われています。
HPVワクチンのリスク
ワクチン接種後には、多くの方に接種部位の痛みや腫れ、赤みなどを生じることがあります。また非常にまれですが、重い症状※1が起こることがあります。ワクチンが原因かはっきりしないものを含めて、接種後に重篤の症状※2として報告されたのは接種1万人あたり5人です。
接種後に気になる症状が出たときは、必ずお医者さんにご相談下さい。
※1重いアレルギー症状(呼吸困難や蕁麻疹など)や神経系の症状(手足の力が入りにくい、頭痛・嘔吐・意識の低下)。
※2重篤な症状には入院相当以上の症状などが含まれていますが、報告した医師や企業の判断によるため、必ずしも重篤ではないものも重篤として報告されることがあります。
子宮体がんについて
子宮体がんは、別名“子宮内膜がん”と呼ばれるように、子宮の内側をおおう子宮内膜から発生するがんです。閉経にさしかかる40代後半~50代に多く、最近増加してきています。その原因として食生活の欧米化、妊娠・出産回数の減少などが原因とされています。また若い女性でも排卵障害のある人では、女性ホルモンのうちの卵胞ホルモン(エストロゲン)だけが持続的に分泌され、それが子宮内膜を持続的に増殖させ、子宮内膜がんを発生させる恐れがあります。
【自覚症状は不正出血から】
通常、不正出血を認めることが多いです。月経以外の不正出血があれば、必ず検診を受けるようにしましょう。
【癌検診の方法】
体がん検診も頚がん検診と同じように、まず”細胞診”をしますが、体がん検診では子宮の内腔にブラシを挿入し細胞を採取します。細胞診で異常が見つかった場合は、内膜組織を採取し、精密検査を行います。しかし細胞診で異常がひっかからないことも多々ありますので、不正出血が頻回にあるような場合も内膜組織を採取し、精密検査を行います。また、通常閉経以後は子宮の内膜は薄くなるため、超音波で子宮内膜の厚さを観察するのも診断の助けとなります。