更年期障害(ホルモン補充療法)

更年期障害(ホルモン補充療法)について

更年期は女性の誰もが通過する人生の通過点。正しく理解してそれからの人生を快適に過ごしましょう。

まず女性のからだと更年期のことを知ろう

女性ホルモンのバランス
女性のからだは卵巣から分泌される女性ホルモンによって、心身ともに大きな影響を受けています。女性ホルモンには、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の2種類があり、互いにバランスを取り合いながら働いています。

閉経前後の体の変化
ところが40歳代でそれまで順調に訪れていた月経が不規則になり、女性ホルモンの分泌も低下し、やがて閉経を迎えます。通常1年間以上月経をみなければ、閉経と言います。この閉経前後の一連の移り変わりの時期を”更年期”と言います。ひとくちに”更年期”と言っても迎える時期には個人差があり、一般に閉経をはさんでの前後10年くらいの間を言います。”更年期”が続く期間も人によって異なります。

更年期の症状

更年期には、卵巣の機能が低下し女性ホルモンが急激に減少することと、その時期の心因性ストレスとによって、心身に様々な症状が現れてきます。まず、月経周期にその変化が現れますが、この他にも一般的に不定愁訴とよばれている一定しない症状がからだのいろいろな場所に現れてきます。

血管運動神経障害 
顔のほてり(ホットフラッシュ)・汗をかきやすい(発汗)・手足の冷え など 
運動器系障害 肩こり・腰痛・関節痛 など 
精神神経障害 頭痛、不安、イライラ、 不眠、憂うつ など 
知覚障害 手足のしびれ感・感覚がにぶる・蟻がからだをはう感じ など 

更年期の治療法

【薬物療法】 

  1. ホルモン補充療法(HRT=hormone replacement therapy)
  2. 精神安定剤
  3. 抗うつ剤
  4. 自律神経調整剤
  5. 漢方薬

【心理療法】カウンセリング

【その他】スポーツ、文化活動など

ホルモン補充療法(HRT)

以前から行われている薬物療法として、不眠やイライラ、抑うつ状態に対して精神安定剤、抗うつ剤、自律神経失調症に対して自律神経調整剤、また、各症状に合わせた薬剤が投与されています。このほかカウンセリングやスポーツなどによる生活環境の改善も効果的です。

最近では不足している女性ホルモンを補うことによって、更年期症状を改善しようという考えから、HRTがはじめられています。エストロゲンとプロゲステロンを併用することによって子宮体癌の発生が抑えられることがわかっており、これが現在行われてるHRTです。子宮筋腫などで子宮を摘出している方には、エストロゲンのみが使われることもあります。

また、閉経以後に高脂血症、動脈硬化から起こる心血管障害や骨粗鬆症といった成人病が増加することが知られていますが、その原因としてもエストロゲンの慢性的な減少が関係しています。そこで女性ホルモンを補ってやればこれらの成人病を防ぐことが可能になります。またアルツハイマー病の予防にも有効と考えられています。

エストロゲン欠乏による
症状、状態の改善

  1. 顔のほてり、発汗などの改善
  2. 肩こり、腰痛などの改善
  3. 不眠、うつ状態などの改善
  4. 皮膚・粘膜の若返り、性交障害の改善

エストロゲン欠乏による
疾患の予防

  1. 骨そしょう症の予防、進行防止、骨折の予防
  2. 高脂血症、動脈硬化の予防心・血管系疾患の予防
  3. アルツハイマー病

HRTをどのくらいの期間続けるかについては、治療目的によって異なります。更年期の一時的な症状を改善させるだけであれば、数ヶ月~数年で可能ですが、将来的な高脂血症、動脈硬化による心血管障害や骨粗鬆症などの予防をするためであれば、10年以上続けます。

HRTをはじめる前、はじめた後に気をつけること

  • 乳がんや子宮内膜がんがある場合には避けて下さい。
  • 月経のような出血が起こることがあります。
  • 次のような副作用が起きる場合があります。
    乳房の痛み、しこり、おなかがはる感じ、頭痛など
  • 治療効果や副作用の検討を行うため、定期的な検診を受けてください。

HRTをはじめる前には子宮体癌、乳癌がないか、子宮筋腫などがないか、肝機能に異常がないか、血栓症の既往がないか、糖尿病がないかなどを確認した上で治療を開始します。治療を開始した後も同じように検診が必要です。

エストロゲンとプロゲステロンを併用することで、将来的な子宮体癌の発生は抑えられると言われています。乳癌についてはHRT施行期間に比例して微妙に増加しますが、HRTは乳がん発生の強いリスク因子ではないとされています。副作用としては、性器出血、乳房痛・緊満感、悪心・嘔吐、おなかがはる感じ、下腹部痛などがありますが、このような症状が現れた場合は、必ず医師に相談してください。

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