性行為感染症(STI)

性行為感染症(STI)について

最近若い方の間でいろいろなSTIが増加しています。

セックスでうつる病気、性行為感染症(STD = sexually transmitted infectionの略)は、かつては「性病」と呼ばれ、いわゆる「遊んでいる人」の病気と考えられていました。ところが最近は性行動が若年化しており、自由化しているため若い人の間でいろいろな病気が流行しています。またSTIには男性より女性の方がかかりやすく、またかかれば体へのダメージが大きいです。
ここでは代表的なSTIを紹介しますので、正しい知識を身につけましょう。

クラミジア感染症

クラミジア・トラコマティスという病原体によって起こるSTIです(淋菌との混合感染も10~20%にみられます)。まず子宮頚管炎として発症し、その後子宮内膜炎、卵管炎などから骨盤腹膜炎(PID)に進展することがあります。卵管に炎症を引き起こすと将来、卵管性不妊症、子宮外妊娠の原因となることがあります。

【症状】
膿性の黄色帯下を認めますが、なかにはまったく無症状の場合もあります。このため感染に気付かずPIDに進展することがあります。また最近では、オーラルセックスが一般的となってきているためクラミジア性咽頭炎も増加してきています。妊婦でも5%前後にクラミジアが検出されており、切迫早産、児への垂直感染などの問題が起きてます。

【治療】
ニューキノロン、マクロライド、またはテトラサイクリン系の薬剤が使用され、7日間の内服が必要です。妊婦にはニューキノロン、テトラサイクリン系の薬剤は使用できないので、マクロライド製剤が用いられます。またパートナーも同時に治療することが必要です。

淋病

淋菌によるSTIです。クラミジアと同様に子宮頚管炎として発症し、PIDに進展することがあります。またクラミジアと同様に卵管性不妊症、子宮外妊娠、そして淋菌性咽頭炎の原因となり得ます。

【症状】
膿性の黄色帯下を認めますが、なかには無症状に経過する潜在性感染者も多く、感染に気付かずPIDに進展することがあります。

【治療】
ロセフィン点滴がfirst choiceで使用されますが、最近薬剤に耐性のスーパー淋菌も増えています。またパートナーも同時に治療することが必要です。

性器ヘルペス症

性器ヘルペス症は単純ヘルペスウィルス(Herpes simplex virus : HSV)1型(HSV-1)または2型(HSV-2)の感染によって性器、もしくはその周辺に発症するSTIです。

【症状】
初感染では強い疼痛を伴う水疱や潰瘍性病変が出現し、発熱や両側の鼠径リンパ節の腫脹を伴うことが多いですが、無症状の場合もあります。HSVが性器の皮膚・粘膜に感染すると、神経を通じて仙骨神経節に至り、そこに潜伏します。そして体の抵抗力、免疫力が下がったときにHSVが再び活性化し、その神経の支配領域に再発を繰り返すため、難知性と言われています。

【治療】
HSVに対する抗ウィルス剤(内服または軟膏)が使用されます。

尖圭コンジローム

尖圭コンジロームはヒトパピローマウィルス(human papillomavirus : HPV)により発症するSTIで、女性では主に外陰部、膣壁、子宮頸部に乳頭状の良性腫瘍をつくります。HPVは現在80種類を越す型が知られており、尖圭コンジロームでは6、11型による感染が多いと言われてます。

【症状】
腫瘍表面は白色からピンク色など様々で、疼痛などの自覚症状は少なく、掻痒感や外陰にザラザラしたものが触れるといったことで気付くことが多いです。最近性行動の自由化、多様化に伴い、若年層に増加傾向にあり、STIの中でも重要な疾患のひとつとなってます。

【治療】
外科的切除、電気凝固、冷凍療法、レーザー療法などの他に、ベセルナクリームなどの薬物療法がありますが、治療後も再発することが多く、根気強く治療することが必要です。またパートナーにも陰茎コンジロームがあることが多く、同時に治療をすることが早期治癒に結びつきます。

トリコモナス膣炎

トリコモナス原虫(Trichomonas vaginalis)によるSTIで婦人科疾患の中でも最もポピュラーな疾患のひとつです。女性では膣のみならず子宮頚管、尿道、膀胱、バルトリン腺、男性では尿路系や前立腺に感染します。

【症状】
女性で黄色膿性あるいは泡沫状で悪臭を伴った多量の帯下を認めたり、外陰部掻痒感を認めたりします。

【治療】
メトロニダゾール、チニダゾールの膣錠、経口剤を使いますが、膣錠を用いた膣内局所の治療をしても膣以外からの自己感染を起こし、再発を繰り返して慢性化することがあるため、経口剤を併用することが必要です。またパートナーとのピンポン感染を防ぐためにも、パートナーも同時に治療することが大切です。

外陰・膣カンジダ症

外陰・膣カンジダ症は主として真菌であるCandida albicansを病原体として発症しますが、もともと膣内に常在する一菌種であり、通常は人体に害を及ぼしません。ところが抗生剤の連用やステロイド剤の使用、また体の抵抗力、免疫力が低下したとき、などに異常に増殖して病原性を発揮します(自己感染)。最近ではSTIの一種とも言われてますが、これも自己感染に関わりを持つ諸因子がいくつか絡み合っているものと思われます。

【症状】
特有の白色帯下、外陰・膣部の掻痒感、発赤、腫脹などが認められます。

【治療】
抗真菌剤の膣錠や外用剤による局所療法が主になります。治療後に再発を繰り返す難治性のカンジダ症もありますので、根気強い治療が必要です。

子宮頸癌とヒトパピローマウィルス

ヒトパピローマウィルス(HPV)は尖圭コンジロームの原因ウィルス(主に6、11型)として知られ、多くの疫学的調査でも性交によって伝播するSTIであることが示されています。またHPVのDNAが子宮頚癌、子宮頚部異形成でも高率に検出されており、現在HPV感染は子宮頚癌発症の最大の危険因子であると考えられています。HPVは現在80種類以上の型が同定されており、その中でも悪性病変に検出頻度が高い高リスク群(16、18、45、56型など)、検出頻度が低い低リスク群(6、11型など)、そしてその中間の中間リスク群(31、33、35、51、52、58型など)に分類されています。
最近の性交渉の低年齢化、性行動の自由化、多様化に伴い子宮頚癌の発症年齢の若年化が危惧されています。

子宮頚がん予防ワクチン“シルガード9”は、6、11、16、18、31、33、45、52、58型の感染を予防し、90%子宮頚がんの発症を予防すると言われています。

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